情報の提供:P210Δ

到達目標

◎患者および医薬品に関連する情報の授受と共有の重要性を感じとる。(態度)

討議 90分 x 3コマ



指導薬剤師が行うこと

・薬学的な観点から処方医等への情報提供が必要と判断した例について、その理由を学生に説明した上で、処方医等とのやり取りを見学させる。

・医療機関完結型医療と地域完結型医療のそれぞれの特徴について説明する。

・お薬手帳の活用について説明する。

・退院時共同指導等について説明する。



学生が行うこと

・薬剤師が医師等の医療従事者と行う情報のやり取りを見学する。

・地域完結型医療における薬剤師の役割や、他の医療従事者との連携・情報の共有の重要性を説明する。



評価の視点

・医療従事者との連携・患者情報共有の重要性を理解し、情報の授受が出来る。

・地域完結型医療における薬剤師の役割を説明できる。



当薬局での指導

薬学的な観点から処方医等への情報提供が必要と判断した例について、その理由を学生に説明した上で、処方医等とのやり取りを見学させる。

長期実習とはいえ、上記のような状況が業務中に発生する事は当薬局においては稀である。なので、以前に起こった事例を紹介することとする。また、業務中に上記状況が発生すれば、見学してもらう。


具体例は下記。

・ある患者が歯科の処方箋を持って来局。

抗生剤(ジスロマック)が処方されていたため調剤し、服薬指導を行った。

三日後、眼科を麦粒腫との事で受診。処方箋を持ってきたが、抗生剤と消炎酵素剤が処方されていた。

先日、歯科にて処方されていた抗生剤の服用は終わったと眼科医には報告していたが、その抗生剤がジスロマックとまでは言っていない。ジスロマックはその薬効が服用初日から1週間薬効が持続するため、体内にはまだ抗生剤の効力が残っている状況となっているはずであるので、眼科医に疑義照会を行った。

眼科医との話し合いにより、当日の麦粒腫のための抗生剤と消炎酵素剤の処方は削除となった。



医療機関完結型医療と地域完結型医療のそれぞれの特徴について説明する。

医療機関完結型医療とは、大病院の中であらゆる科を受診して個人の様々な疾病の治療を行うと言うものである。この医療機関完結型医療のメリットは患者側からすればその病院にさえ行けば様々な治療を受けられるという事である。

デメリットとしては医療従事者に限りがあるため非常に時間がかかる事、それに伴い、急性期の疾患を持つ患者への対処が遅れるという事にある。

地域完結型医療は、地域特性を踏まえた診療提供体制の確立や、病院と診療所の役割分担の明確化を行い、従来の医療機関完結型医療から脱却するというものである。

このメリットは、大病院などは急性期や高度医療にその機能を発揮出来るという点にある。慢性期の状態が安定した患者には地域の医院を受診してもらう事で患者の待ち時間短縮にも有効である。

デメリットとしては患者側からすれば、その地域に無い診療科を受診しようとするならばやはり大病院を受診するか、遠くの生活圏外まで足を運ばなくてはならない。

また、診療科ごとに通院せねばならないので交通の便が悪い地域では患者負担が大きくなる。

〔参考資料〕
医療機関の機能分化・連携と医療機能の重点化の促進(PDF) 埼玉県



お薬手帳の活用について説明する。

お薬手帳というものは、各個人が受診している診療科から処方されている服用薬を1冊の手帳に記載し、併用薬を確認できるようにしたものである。このお薬手帳を有効に活用すれば、重複投薬や併用注意薬などの確認をする事ができ、事前に薬害を防ぐ事が出来る。

人間は高齢になるほど、疾患が増え、併用薬も増えるものである。しかも、医薬品名称等はなかなか簡単に覚えられるものではなく、患者の記憶に頼って併用薬を確認するのはあまりにもナンセンスである。こういった場合にお薬手帳が活躍するのである。



退院時共同指導等について説明する。

退院後、在宅での療養上必要な説明及び指導を入院中医療機関の医師が、

・退院後の在宅療養を担う医療機関の医師
・看護師
・准看護師
・歯科医師
・歯科医師の指示を受けた歯科衛生士
・保険薬局の薬剤師
・訪問看護ステーションの看護師
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・介護支援専門員

などと共同して行う。

薬剤師としては、入院中の服用薬の詳細、及び、退院後の担当医師の治療計画、投薬計画などを確認して患者退院後の治療に当たることになる。